主な疾患
腰部脊柱管狭窄症・腰椎変性すべり症・腰椎分離すべり症
腰椎部分の靭帯が肥厚したり、骨・椎間板などが変形・変性したり、腰椎がすべり症によって前後方向にずれることにより脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなり、神経を物理的に圧迫することで下肢の痺れや痛みが生じます(図2)。
腰部の靭帯の肥厚や骨・椎間板の変性は、加齢に伴うものと考えられています。腰部脊柱管狭窄症の下肢痛の特徴は、歩行中に下肢痛やしびれが悪化して歩けなくなり、座位や前かがみでは症状が軽くなってまた歩けるようになる 間欠性跛行です。また、自転車の運転では症状が出現しにくいことなども特徴として挙げられます。
また腰椎変性すべり症や腰椎分離すべり症では、脊椎不安定性をきたし、腰痛を引き起こすことがあります(図3)。
総合せき損センターでの治療
下肢の痺れや痛みが比較的軽ければ、まず消炎鎮痛薬の内服などの治療を開始します。症状が改善しない場合や症状が悪化する場合、日常生活に著しい障害がある場合などには手術療法を検討します。
また、下肢の筋力低下や膀胱直腸障害(自分で尿が出せない、失禁など)が生じている場合は早期の手術が望ましい場合もあります。手術療法は基本的に、肥厚した骨や靭帯を切除し、脊柱管(神経の通り道)を広げる手術をまず考慮します。
そうすることで下肢症状の改善を期待します(図4)。
椎間板ヘルニアによる圧迫が主な原因の場合は、ヘルニア摘出術を行います。
ヘルニアの状態に応じて内視鏡による摘出術(MED)や顕微鏡下のヘルニア摘出術などが選択されます(図5)
また下肢症状を引き起こす原因に、脊椎不安定性が強く関与している場合、金属製の固定具を使用した脊椎固定術を併用する事も可能です(図6)。
脊椎の不安定性がなくても、ヘルニアの場所によって背骨の関節を切除する必要があり、結果的に不安定性が生じる場合や、背骨の手術後の再手術の場合で固定手術が必要になる場合があります。
総合せき損センターでは3D移動型術中イメージングシステム(O-arm)を使用することにより固定具設置の精度を向上させ、手術の安全性の向上に努めています。