院長あいさつ
総合せき損センターは、昭和54年に本邦で初めての脊髄損傷専門施設として飯塚の地に開設されました。母体は全国32の労災病院を運営する独立行政法人労働者健康安全機構です。
開設当時の昭和50年代までは、脊損に対する医療や社会の意識が極めて未熟な時代でしたが、先進的な施設や制度を持つ欧米との格差を憂えた九州大学整形外科第3代教授、故天児民和先生の提言が発端となり、脊髄損傷に対する急性期から社会復帰まで一貫した専門治療を提供するモデル病院として当センターは誕生しました。
以来、良質で高度な脊損医療を提供し続けてまいりましたが、当センターの最も優れた点は、各職種が誇りと情熱を持ち、お互いに連携を保ちながら患者さんの治療に当たっている点であります。80%を越える高い社会復帰率を維持できているのは、ひとえにこれまで培ってきたチーム医療の賜だと確信しています。
平成25年には新病院が完成し、平成31年には開設40周年を迎えました。急患脊損入院患者数は2600名を越え、今や本邦随一の脊損専門施設として国内外から高く評価されております。 特記すべきこととして、当センターでは外傷以外の脊椎脊髄疾患(椎間板ヘルニア、頚髄症、脊柱管狭窄症などの変性疾患、側弯症などの脊柱変形、脊椎脊髄腫瘍など)治療においても本邦有数の手術実績を誇っております。7名の脊椎脊髄病指導医、リハビリテーション科専門医を擁しており、年間700例以上の脊椎脊髄手術を行っております。術後は、充実したリハビリテーション施設とスタッフを生かして、患者の満足度を充分に考慮したリハビリテーションが行われているのも当センターの特徴の一つといえるでしょう。
また、泌尿器科指導医のもと、脊髄障害に合併する神経因性膀胱の専門治療を行っており、この分野でも国内外の高い評価を得ております。一般泌尿器科疾患(前立腺肥大、過活動膀胱、膀胱炎など)に対しても積極的に診療を行っておりますが、平成29年からは女性泌尿器科外来を開設し、地域の医療ニーズに答えるべく努力をしております。
私どもは、今後とも患者さんに頼られる、患者さんに優しい病院づくりを目指していきます。患者満足度調査では、毎年国内で有数の高い満足度を達成していますが、「受診してよかったと思われる病院でありたい」の理念のもと更なる努力を積み重ねて参りたいと思っております。
院長 前田 健