独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター

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主な疾患

脊柱側弯症(特発性側弯症 症候性側弯症)

脊柱側弯症は、脊椎が左右に曲がっている状態(側弯)で、前方から見てCobb角(図1)が10度以上のものを指します。側弯症は椎体の回旋(ねじれ)や椎体の楔状化などを伴わない非構築性側弯症とこれらを伴う構築性側弯症に大別されます。

非構築性側弯症は、ヒステリーや神経痛や腰痛、脚長差などが原因で起こるもので、自己矯正や原因の除去で消失します。

脊柱側弯症の外観とレントゲン像
図1 脊柱側弯症の外観とレントゲン像

構築性側弯症の中で最も頻度が高いのは特発性側弯症です。特発性とは「原因不明」と同義であり、残念ながら大多数の側弯症の原因が分かっていません。特発性側弯症の発生頻度は、装具治療の対象となる20~30度以上の側弯症で0.3~0.5%、手術を検討する必要が出てくる40度以上の側弯で0.1%以下と言われています。

側弯症は一般的に若年ほど進行しやすく、骨の成長が止まると急激な進行は起こりません。そこで、年齢(骨の成熟度)、側弯の程度、進行の速度などにより治療法が選択されます。例えば、10~12歳の側弯症は、Cobb角30度以上では90%、コブ角60度以上では100%の確率で進行すると言われています。

ある程度進行した側弯を放置し重度の側弯症(80度以上)に移行してしまうと、呼吸機能障害(運動時の息切れ)や腰痛・背部痛の出現頻度が増加し、容姿の問題や精神的問題も生じてしまいます。

総合せき損センターでの治療

側弯症治療の目的は、これらの問題をできるだけ生じさせないように、側弯の進行を予防することです。

治療内容は側弯の程度や年齢(骨の成熟度)によって、3つの方法が選択されます。

定期的な診察

軽度の側弯症(Cobb角が25度以下)では、3~12ヶ月毎にレントゲン写真を撮影して側弯の進行具合をチェックします。
側弯の進行状況に合わせて、負担を伴う装具療法や手術療法を行う必要があるか判断します。

装具療法

骨成熟前(14~15歳以下)でCobb角が25度以上の場合に、側弯の進行予防を目的に行う治療です。装具には様々な形態があり、側弯の形状にあわせたものを選択します。

装具の装着時間は長いほど側弯の進行予防効果があることが分かっており、入浴や体育を除き一日中着用します。装具治療中は数ヶ月毎にレントゲンを撮影し、側弯の進行具合を確認します。

Cobb角が40度以上になると手術療法を検討します。

側弯症装具の例
側弯症装具の例
手術療法

手術の目的は、脊椎の変形を可及的に矯正した状態で固定し、呼吸機能障害や腰背部痛、容姿や精神的問題などが顕在化してくる重度の側弯への進行を予防することです。一般的にはCobb角が40度以上の側弯が対象になりますが、年齢(骨の成長度)等も加味して、手術の必要性を判断します。

手術が望ましい症例では、いたずらに手術時期を遅らせると変形が進行し手術の範囲が長くなってしまう場合もあり、適切な時期に手術を行うことが望ましいと考えられます。

尚、骨の成長終了後(18~20歳以上)もCobb角が40度を超えた側弯症は年間0.5~1度程度進行するといわれており、手術を行うことが望ましい場合があります。

特発性思春期側弯症に対する後方矯正固定術
特発性思春期側弯症に対する後方矯正固定術