独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター

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O-arm

O-arm導入の経緯

導入の経緯についてお聞かせください

患者様とのご縁

福岡市の会社経営者である中本博雄氏からご寄付を頂き導入しました。

中本氏の奥様は10年来腰の痛みに悩み、他の病院で2度手術しても改善されなかったのですが、3年前に当センターで診察、手術を受けて改善され、大変喜んでご退院されました。我々医師は、地域医療の発展と脊髄専門病院として最善の診察、治療を目指していますが、中本氏は当センターの技術の高さと患者様への対応にご満足され、恩返しの意味を込めてご寄付を下さったようです。

O-arm
実際のO-arm導入写真

O-armはナビゲーション手術において高精細な画像表示ができ、これまで非常に難易度が高かった手術をはじめ、脊椎固定術から最も複雑な脊椎外科手術まで、脊椎外科手術やインストゥルメンテーション手術を効率化できます。脊椎外科領域において、最先端O-armナビゲーション手術は一つのトピックとなり注目されておりO-armは当院でも導入したかったのですが、このような最新鋭の機材は高額になり導入が難しかったのです。しかし今回、福岡県下で初めて導入することができ本当に感謝しております。

従来手術と導入後の違い・メリット

O-arm導入によって可能となった症例などはありますか?

より安全に。より広がる可能性

まず言えるのは、今までの手術がより安全になったということ。外傷によって脊椎が激しく損傷した場合や、脊椎変形、靭帯骨化症など、極めて困難だった手術が安全で比較的容易におこなえるようになったと言えます。

インストゥルメンテーション手術など従来の外科手術と比較して、用いられるスクリューを入れる位置が正確に確認できるようになりました。成人脊柱変形の手術など、スクリューを入れる位置が細く狭い場合などは医師側もかなりの神経を使っていましたが、O-armナビゲーションシステムによって安全に誘導され、成人脊柱変形や側弯症などの矯正固定手術がより安全にできるようになり、患者様の手術後の様子も大きく改善されたと感じます。

整復固定術
複雑な脊椎外傷に対する整復固定術

医療の現場は常に緊張感がつきものですが、従来の外科手術ではリスクが大きく出来なかった症例も正確性は向上し、安全に手術ができる領域は広がりました。また、除圧範囲の設定が細かく行えることで、これまで判断が難しかった切除できる骨の範囲も明確に判断できます。そのほか、脱臼した時の整復状態の確認などにも幅広く応用でき役に立っています。

O-arm導入後の効果

従来の手術と比較して、導入後の効果をお聞かせください

手術時間の短縮と患者様の負担軽減

ナビゲーションシステムによって、リスクが大きかったスクリュー挿入も安全になり、手術時間の短縮にも大きくつながっています。通常のナビゲーションは、手術前に撮影したCT画像をレジストレーション(患者の位置、CT画像位置の登録作業)によって間接的に照合するため誤差やズレが生じやすいのですが、O-armナビゲーションというのは手術中に直接CTの撮影ができます。これにより直接的な画像で診断やレジストレーションができ、繊細な手術における画像の正確性を確保できます。

より強固な固定が可能になれば変形矯正の効果も大きくなりますし、外固定の期間を短縮でき、より早くリハビリを開始できるようになります。これは、従来の手術とO-arm導入後の手術の違いであり患者様へのご負担軽減という点でも大きなメリットです。

矯正固定手術
成人脊柱変形や側弯症に対する広範囲の矯正固定手術
矯正固定手術
成人脊柱変形や側弯症に対する広範囲の矯正固定手術

O-arm導入による今後の可能性

O-armの有用性・可能性について、お聞かせください

最先端の医療と向き合う

O-armナビゲーション手術の導入によって、損傷部位の詳細確認やリスクの低減、正確なスクリュー挿入により強固な固定が可能となることで、術後の早期リハビリ開始が可能となり早期回復につながるなど多くの効果が得られました。手術と透視を同時に行う手術中透視などが、必要な場合でもO-armを導入することによって医師の被曝が防げるのもメリットです。

最先端の機器を導入することによって従来難しかった側弯症や脊柱変形(成人脊柱変形)、靭帯骨化症の手術なども、より正確、より安全に手術できるようになり、患者様へのご負担が軽減できるようになったことは大きな成果です。

手術中
手術中のイメージ写真

将来的にはナビゲーション手術に付随したゴーグルなどの医療機器も導入して、従来のバーチャルリアリティーの世界がより発展した現実として医療の分野でも生まれる可能性があるのではないかと思います。現在でも試みはありますが、緊急対応が難しい地域や離島などでもリアルタイムでの遠隔手術がより発展していく可能性も大きいでしょう。また、MRIなどとうまく連携し、脊髄内の腫瘍の位置を特定するなど、統計データが再生医療に役立つこともあり得るのではないかと期待もできます。

画像診断
医療チームによる画像診断の様子

このようにO-armの有用性は従来のインストゥルメンテーション手術に大きな効果と可能性を与えてくれましたし、何より患者様へのご負担が軽減できることは最大の効果です。これは医療の躍進であると同時に手術中の医師教育の面でも役に立つと言えます。一方で、O-armは素晴らしいシステムですが、100パーセント常に正確であるというわけではなく、手術中の患者様の僅かな体位変化などにより僅かなズレが生じることもあります。つまり我々医師も、完全に機器の画像に頼りきってしまってはならないのです。

O-armや機器の表示に違和感を感じた場合、正しく判断できるのは経験で得た感覚を身に着けた医師だけです。医師は経験と感覚を大切にしながら最終判断をしなければいけません。O-armは医療の現場で大きな有用性を備えていると同時に、医師にとってよきパートナーであるべきだと考えます。

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