独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター

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主な治療法

仙⾻神経刺激療法(SNM)

当院では、難治性の過活動膀胱に対する新しい治療として2019年10⽉から「仙⾻神経刺激療法」を開始しました。筑豊地区では初めての導⼊になります。過活動膀胱の治療は、⽣活指導に加えて抗コリン薬・β3作動薬・漢⽅薬などの内服薬を⽤いて治療することが多いですが、なかには、①治療効果に乏しい、②⼝内乾燥や便秘などの副作⽤で内服薬の継続が難しい、といった患者さんもおられます。

⼀般的に⽣活指導と内服薬による治療を3ヶ⽉程度続けても症状改善が得られない場合に「難治性過活動膀胱」と診断します。このような場合に有効な治療法のひとつとして「仙⾻神経刺激療法」があります。欧⽶では20年程前からおこなわれている治療法ですが、本邦では2017年9⽉にようやく保険収載されました。

過活動膀胱の治療でお困りの⽅、「仙⾻神経刺激療法」に興味のある⽅は、お気軽にお問い合わせください。

仙⾻神経刺激療法(SNM)とは?

排泄に関係する神経(仙⾻神経)に持続的に電気刺激を与えることで過活動膀胱の症状改善を図る治療法です。⼿術は2回に分けて⾏います。

1回⽬の⼿術で電気刺激⽤の刺激電極(リード)を臀部から挿⼊して⼀定期間(3-7⽇程度)電気刺激(体外式の刺激装置を使⽤)をおこない、⼗分な治療効果が得られるか確認します。効果が認められない場合は、リードを抜去します(以前の状態に戻ります)。

体内に植込んだ刺激装置
持続的に電気刺激を行うため、心臓ペースメーカのような装置を体内に植込みます。

効果が認められた場合は、2回⽬の⼿術で体内植込み型の刺激装置を臀部に植込んで治療を継続します。治療効果は個⼈差がありますが、⽶国で⾏われた臨床試験では、治療開始3ヶ⽉⽬の時点で1⽇の尿失禁回数が約80%の患者さんで⼿術前の半分以下に減少しました。また約40%の患者さんで尿失禁が消失しました。

このような治療方法です

1. リード(刺激電極)の挿入
まず治療効果を確認するために、リードだけをおしりの仙骨にゆっくり挿入します。大きな切開は行いませんが、手術室で麻酔をかけて行います。
2. 試験刺激
挿入したリードと対外式の刺激装置を接続して、1~2週間試験的に刺激を行い、治療効果を判定します。もし、効果が認められない場合は、刺激装置の植込みは行わずリードを抜去します。
3. 刺激装置の植込み
試験刺激により治療の効果が認められた場合は、すでに挿入されているリードを刺激装置に接続した後、おしりのふくらみ上部に植込みます。
仙⾻神経刺激療法(SNM)の特徴
  • 刺激装置を植込む前に、試験刺激で効果を確かめられます。
  • 効果が認められない場合にはリードを抜いて、以前の状態に戻すことができます。
  • 刺激装置の植込み後は、刺激の調整をご自身でコントロールできます。

効果について

仙⾻神経刺激療法(SNM)は、過活動膀胱の原因となる病気を治す訳ではありません。治療効果は、患者さんの症状によって異なります。

これまでに米国で行われた臨床試験では、治療開始3か月の時点で、1日の尿失禁回数が約4割の患者さんで0回に、約8割の患者さんで手術前の半分以下に減少しました。また頻尿の患者さんでは、約7割の患者さんが8回未満の通常排尿回数、または手術前の半分以下に減少し、尿失禁、頻尿共に、1年後も効果が持続しました。

米国臨床試験の結果
出典:2016年報告の米国臨床試験の結果より
仙⾻神経刺激療法の留意点
  • 植込み部位に違和感や痛みを⽣じる場合があります
  • 体内に異物を植込むため、感染を起こすことがあります
  • 植込み機器の材料(チタン、シリコンなど)にアレルギー反応を起こす可能性があります
  • 植込み後は MRI 検査を原則受けられなくなります
  • 運動の制限があります(激しい運動や⼤きく体をひねる・伸ばすなど)