低侵襲脊椎手術への取り組み
より患者さんにやさしい手術を目指して
総合せき損センターは、脊椎脊髄手術治療において九州地区をリードする実績を持っています。近年、脊椎・脊髄外科領域において手術の低侵襲化が急速に進歩しており、小さな傷で手術を行うことにより患者さんの術後の早期回復やQOL向上に大きく貢献しています。当センターでは最新の低侵襲脊椎手術技術を積極的に導入し、患者さんにやさしい医療を提供できるよう努めております。
脊椎内視鏡手術
Biportal脊椎内視鏡手術(UBE手術)
Biportal脊椎内視鏡手術は、従来の単一穴での内視鏡手術とは異なり、2つの小さな皮膚切開を用いて行う革新的な低侵襲脊椎手術技術です。一方の切開部から内視鏡を入れて手術部位を観察し、もう一方の切開部から手術器具を入れて操作を行います。この「観察するための切開部」と「手術操作するための切開部」を分けることで、以下のような特徴があります。
主な特徴
- 広い視野と自由な器具操作
内視鏡と手術器具が独立しているため、より広い視野が確保でき、器具の自由度が高まります - 持続灌流による視野の確保
常に生理食塩水で手術部位を洗い流すことができるため、血液が洗い流されることで明瞭な視野が維持され、出血のコントロールも容易になります - 従来の手術器具が使用可能
特殊な器具だけでなく、従来の脊椎手術で使用する器具が使えるため、様々な手技への対応が可能となります - さらなる低侵襲性の実現
各切開部は5-8mm程度の小さな傷で済み、組織へのダメージを最小限に抑えられます
適応疾患
- 腰部脊柱管狭窄症に対する除圧術および椎体間固定術
- 脊椎椎間板ヘルニアに対する椎間板摘出術
Biportal脊椎内視鏡手術は、2つの小さな皮膚切開を用いて、一方の切開部から内視鏡を入れて手術部位を確認し、もう一方の切開部から手術器具を入れて操作を行う新しい低侵襲脊椎手術技術です。各切開部は5-8mm程度の小さな傷で済み、組織へのダメージを最小限に抑えることができるため、術後の痛みが軽減され、早期回復により、入院期間の短縮が期待できます。


MED(内視鏡下椎間板摘出術)
MED手術は、腰椎椎間板ヘルニアに対して行われる内視鏡を用いた低侵襲手術です。約16-18mmの小さな皮膚切開から筒状の器具を挿入し、内視鏡下でヘルニアを摘出します。
主な特徴
- 小さな皮膚切開
従来の手術に比べて切開が小さく、筋肉や組織への損傷を最小限に抑制 - 早期回復
術後の痛みが少なく、早期の社会復帰が可能 - 高い安全性
内視鏡による拡大視野で神経や血管を確認しながらの安全な手術操作
適応疾患
- 腰椎椎間板ヘルニア
BKP(Balloon Kyphoplasty:経皮的椎体形成術)
BKP手術は、椎体圧迫骨折に対して行われる低侵襲治療です。皮膚に小さな穴を開け、特殊な器具を用いて椎体内にバルーンを挿入・拡張した後、骨セメントを注入することで椎体の高さを回復し、痛みを軽減します。

主な特徴
- 即効性のある疼痛緩和
術後すぐに痛みの軽減が期待できます - 早期離床
手術翌日から歩行が可能な場合が多く、寝たきりの予防につながります - 短時間手術
手術時間は通常30分から1時間程度
適応疾患
- 骨粗鬆症性椎体圧迫骨折
PPS(Percutaneous Pedicle Screw:経皮的椎弓根スクリュー固定術)
PPSは、椎体を固定するために必要なスクリューを、従来の大きな切開ではなく、皮膚に小さな穴を開けて挿入する低侵襲手術技術です。X線透視装置やナビゲーションシステムを使用して正確にスクリューを挿入することで、筋肉や周辺組織への損傷を最小限に抑えながら、確実な脊椎固定を実現します。
主な特徴
- 筋肉への損傷が少ない
従来の手術では大きく筋肉を切開する必要がありましたが、小さな穴からの操作により筋肉損傷を最小限に抑制 - 術後回復の促進
組織への侵襲が少ないため、術後の痛みが軽減され、早期の回復が期待できます - 高い固定力
ナビゲーションシステムの使用により、正確な位置へのスクリュー挿入が可能で、確実な固定効果を得られます
適応疾患
- 腰椎すべり症
- 腰椎不安定症
- 椎体圧迫骨折(固定が必要な場合)
低侵襲脊椎手術の利点
これらの低侵襲脊椎手術は、従来からの大きな皮膚切開を加える手術と比較して以下のような利点があります。
- 術後回復の迅速化
- 組織損傷が少ないため、術後の痛みが軽減され、早期の回復・リハビリテーション開始が期待できます
- 合併症リスクの低減
- 感染リスクの軽減や術後の合併症発生率の低下が報告されています
- 入院期間の短縮
- 早期回復により、入院期間の短縮が期待でき、患者さんの負担軽減につながります
- 精密な手術の実現
- 拡大視野と器具操作の向上により、繊細な神経組織に対してより精密な操作が可能になります
- 早期機能回復
- 手術翌日から座位・立位訓練を開始できるケースも多く、理学療法士、作業療法士と連携し、早期離床・早期機能回復を目指した治療を提供しています
治療方針
すべての症例に低侵襲手術が適応となるわけではありませんが、症例ごとに病態を詳細に評価した上で、患者さんの負担が最も少なくなることを最優先に最適な治療法を選択しています。当センターでは、これからも積極的に新しい技術を取り入れながら、地域医療に貢献してまいります。
低侵襲脊椎手術に関するご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。